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佐賀県白石町の清水と地元の米から生まれた焼酎「しろいし」。この焼酎がつくられた背景には、奇跡とも呼べる湧き水の復活と、この水を守る人々の深い想いがありました。文字どおり、自然と人の力が出会って生まれた味。そのおいしさの秘密を探ってみましょう。


 佐賀県の南西部、白石平野の西部にある白石町川津地区。わずか60戸からなるこの小さな集落に、“弁天さん”の愛称で親しまれている厳島神社があります。その隣にあるのが、縫ノ池(ぬいのいけ)です。口当たりがやわらかく、清純な味わいをもつこの水は「金妙水」とも呼ばれ、古くは米研ぎや野菜洗いにも利用された生活用水でした。
 ところが、いまからおよそ40年ほど前に突然、池の水が干上がってしまったのです。その原因は、地下水の過剰な汲み上げにありました。大干ばつを機に、白石町では約160もの井戸が掘られ、日々水が汲み上げられた結果、縫ノ池の水が枯れてしまったのです。
 もう満ちることはないと思われていた池にふたたび水が湧きはじめたのは、平成14年のこと。まさに、奇跡と呼べる出来事でした。いまではこんこんと湧き水があふれ、豊かな四季のうつろいを水面に映しだしています。この水は厚生労働省が定める「おいしい水」の基準をも満たし、いまでは水を求めて遠くからも人がやってくるとか。町の人々に愛され続けた名水が、いまここに完全復活したのです。











 白石平野は、佐賀県内屈指の米どころ。特にブランド米ヒノヒカリには、地元の人たちも特別な思い入れを持っています。
 「米には、その土地にあった品種というものがあるはず。いい水がつくりだしたこの土壌だからこそ、ヒノヒカリというおいしい米が育ったんです。栽培は減農薬で、収穫した稲は丹念に選り分けて、粒のそろっているもののみを出荷しています。それくらいのこだわりがなくては、自信をもって世の中には出せませんよ」と、語るのは、佐賀ライスセンターの鶴田武彦さん。ヒノヒカリは粘りと弾力、うま味のバランスがよく、とてもおいしい品種なのです。
 まろやかな口当たりの名水と、おいしい地元米。役者は、そろいました。この二つの原料に、峰の露酒造自慢の杜氏の技が加わって、本格米焼酎「しろいし」は生まれたのです。



 米焼酎「しろいし」の誕生にあたっては、縫ノ池を守るために発足した「縫ノ池湧水会」の多大な尽力がありました。この「縫ノ池湧水会」は、白石町川津地区の住民60世帯、280人すべてが会員。その会長を務めるのが、石橋弘明さんです。
 「この会では、池周辺の整備や清掃、水質チェック、お茶会などをとおして地域住民との交流を進めています。こうした活動のひとつとして、『しろいし』もつくられました。『しろいし』を飲んでいただいた方には、縫ノ池の水のおいしさと、白石町の米の旨さもあわせて実感してほしいですね」
 実は、鶴田さんも湧水会の副会長。まさに、白石町をあげてつくられたのが、「しろいし」なのです。
 できあがった「しろいし」の味は、まろやかな甘口。香りも豊かで、女性ファンにもうってつけのできばえです。
 米焼酎「しろいし」は、縫ノ池の名水と地元の米をこよなく愛する住民たちの心の結晶。ぜひ味わいたい珠玉の一本が、またここに誕生しました。



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