ここ人吉には、いい米とうまい水があります。でも、それだけでおいしい焼酎ができるわけではありません。これに、二つの微生物の力が加わってはじめて、米と水は焼酎になるのです。
そのひとつは、米のデンプンを糖に”変える“麹菌”。そして、この麹菌によって変えられた糖をアルコールに変える“酵母菌です。なかでも酵母菌は、さまざまな香り成分をつくり出すものです。この酵母菌の研究が、私に与えられた仕事。つまり、いかに良質の酵母菌をつくるかが、我々酒造メーカーの腕の見せどころというわけです。
しかし、いい酵母菌はそう簡単につくられるものではありません。ほとんどが失敗の連続だし、忍耐力がなければやれない。正直いって、キツイ仕事ですよ。それでも研究を続けていけるのは、「うまい」と言って飲んでくださるファンがいるからです。
現在は、どこのメーカーでも酵母菌の開発に力を入れています。こうした状況のなか、私たちは熊本県工業技術センターとの共同研究によって、香りのいい酵母菌をつくることができました。この酵母菌は、それ自体が非常に豊かな香りをもっているため、いままでの焼酎とはまったく違った風味が実現できるのです。いずれ、峰の露酒造(繊月酒造)から発売される予定ですので、いましばらくお待ちください。そのときは、こんな男が焼酎づくりを支えているんだと思い返していただければ、ありがたいですね。 |
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