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 ↑これが「夢あしきた」1.8L。
左側は「葦分」720ml。

地元のうまい米と水で、うまい焼酎をつくりたい。そんな峰の露酒造の取り組み”地産地消“は、ここ熊本県芦北町でも、二本の名酒を生み出しました。それが、「夢あしきた」と「葦分」です。そこで今回は、「夢あしきた」の原料づくりに携わる二組の匠の姿を追ってきました。


 海抜204メートル。静かな山間の村、芦北町大野地区の棚田で、「夢あしきた」の原料となる米はつくられています。この大野地区は、古くから献上米をおさめていたという有名な米どころ。おいしい米が生まれる所以は、山地ならではの昼夜の温度差と豊かな土壌、そして大関山を源流とする大関水源の清らかな水にあります。
「つくづく、この村は米づくりに適した土地だと思います。もちろん、この環境に甘えるつもりはありません。私たちは、農薬や化学肥料を極力おさえて、有機肥料を使うようにしています」
 四半世紀を超えて米をつくり続けてきた松崎さんは、さらにこう続けます。
「熊本には、昔、”昭和の農聖“と呼ばれた松田喜一先生がいました。その松田先生の教えは、『稲をつくり、できた作物をすべてその土に返せば、土は痩せない』というものでした。私たちもそれに従い、いまでも米ぬかは田んぼに返す、ということを続けています」
 こうして、大切に、大切に育てられた米は、品質の劣化を避けるため、刈り取り後に徹底した温度管理がなされ、峰の露酒造のトラックで工場へと運ばれます。
「誠心誠意をこめてつくった自分の米が焼酎になるのは、本当に嬉しいこと。わが家でも家族みんなで飲んでいますよ。そしてこれからも、お客様に安心して飲んでいただける原料づくりに努めていきたいですね」
 今年の田植えは、6月の半ばごろ。「夢あしきた」の芳醇な味わいは、こうして育っていきます。












 「夢あしきた」の瓶のラベルには、芦北町伝統の手漉き和紙”大河内紙“が使われています。この大河内紙のふるさとは、芦北町の北部、標高150メートルに位置する銅山(かなやま)地区。夏になると、この集落を流れる吉尾川に蛍が舞い、河鹿蛙(かじかがえる)も鳴く自然豊かな場所です。大河内紙は、この地で江戸時代からつくられていたといいます。その製法も仕上がりも、ほぼ昔のまま現在に伝えられているとか。農閑期の産業として、昭和35年頃まで盛んにつくられていましたが、その後、一時中断。最近になって、復活したといいます。
「この地域には、大河内紙の原料となる楮(こうぞ)の木も、道具もある。それなら、もう一度つくってみよう」。この想いから、幼い頃に大河内紙づくりの技術を学んだ大河内紙保存会の皆さんが復元に挑みました。それを小学校で賞状にしたところ、評判になり、今回のラベルとなったのです。
 このように、紆余曲折を経てよみがえった大河内紙。一枚一枚ていねいにつくられた和紙だからこそ伝わる素朴な温かさが、「夢あしきた」に深みのある表情を与えています。




▲大河内紙と楮の枝

 

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